いい ちいさな ものづくり
「つくる」と「たべる」を一つにする。町工場とデザイナーが出会い生まれたFUJITA KINZOKUのフライパン『ジュウ』。
2021.4追記:
FUJITA KINZOKUさんのフライパン『ジュウ』が「レット・ドット・デザイン賞」と「iFデザイン賞」を2021年ダブル受賞されたそうです!おめでとうございます!
ー 作り手
まん丸な鉄皿と、握り心地の良い天然木の取っ手。FUJITA KINZOKUの不思議なフライパン「ジュウ」は、着脱可能なこの2つのパーツでできています。
鉄皿の外周部分には、ぐるりとリム(ふちの部分)が作られています。 そのリムがあるおかげで、食卓にそのまま出しても違和感のない「お皿」としての佇まいとなっています。
お皿のような見た目でも、もちろん鉄フライパンとしても最高品質です。 1.6mmの厚みを持った鉄フライパンなので、お肉はジューシーに、野菜はシャキシャキに、パンや揚げ物、焼きおにぎりは、外はサクッと中はフワフワに焼けます。また、360度どこからでも、スライドさせるだけでハンドルを取り付けられます。
なぜこんなユニークなフライパンが生まれたのか?それはまったく違う2つのチームが出会ったところから始まりました。
ーものがたり
1つ目のチームは、大阪府八尾市にある町工場、「藤田金属」。1951年の創業以来、フライパンやアルミタンブラー、アルミの急須や風呂桶など、金属を使った様々な日用品を製造してきました。
現在は、藤田金属二代目社長の父と息子3兄弟のご家族で営まれています。
日本では効率とコストを考慮し、「金型」と「加工」とは別の工場で行う分業体制が多いのですが、藤田金属さんでは両方を自社で行います。
金型から製造そして販売まで全てを自社で行える藤田金属さんは、いわば「家族経営の町工場」。スピードや効率ではなく、 行ったり来たりを繰り返し、素早く実験できる環境の中で、フライパン「ジュウ」は生まれました。
そしてもう1つのチームが、治田将之さんと青木亮作さんからなるクリエイティブユニット、「TENT」さんです。
2016年の春ごろ、自社の商品の製造先の工場を探していたところ、藤田金属さんと出会い、そこから開発に至ったそうです。
始めはアルミの急須や鍋などの話も出ていましたが、打ち合わせをしていく内に、やるなら鉄フライパンだ、という気持ちに全員がまとまっていったそうです。
しかし、そこには大きな壁もありました。
はるか昔から存在する鉄フライパンに、
これ以上改良の余地は残っているのか?
表面処理や色を変えるだけでいいのか?でもそれは何か違う気がする・・・
そんな漠然とした状態の中、ある気づきがありました。
これまでのフライパンって、
「料理人のための最高仕様!」だったり
「主婦の味方!」みたいなものが多い。
お母さんが、あるいはシェフが
誰かのために作ってあげることが前提になっていないか?
「調理する人」と「食べる人」が、 あるいは 「調理する場所」と「食べる場所」が分離している事を前提にしてるものばかり。しかし、生活の中の調理の風景は本当にそれだけでしょうか?
例えば一人だけの自炊なら、盛り付けや洗い物が面倒で、作った鍋からそのまま食べてしまったり、効率を重視するあまり、決して人様には見せられないという食事体験は、実は結構みんな持っているものではないでしょうか。
自分が自分のために、効率良く調理して食べる。
それって本当はすごく格好良いことなのに。
もったいないなあと思ったんです。
そこから「つくる」と「たべる」を一つにする。というコンセプトが固まっていったそうです。
しかし、その後も大変です。
量産のバラツキがどこまで抑えられるか、
例えば、どう固定してどう溶接すれば位置がズレないかなど、
何度も何度も試作検討を繰り返しました。
木の内部構造を0.5mmだけ変更したり、金属の厚みを少し厚くしたり、
ネジ位置を数ミリ変更したり溶接を工夫したり。
細かな調整が何ヶ月も続きました。
数え切れないほどの試作と検証があって、このシンプルな形に辿り着いていったそうです。
ー 想い
フライパン「ジュウ」が目指したのは、
「普通に、毎日使える」こと、そして、
「つくる」と「たべる」を一つにする。ということ。
毎日使えるために、極力シンプルな加工方法を考えて価格を抑え、そして、食卓にそのまま出しても違和感のない「お皿」のような佇まいになりました。
熱々そのままの美味しさを、自分のために、誰かのために。鉄フライパン「ジュウ」は、食事の時間の気持ちを軽く、楽しく、美しくしてくれる存在です。
ー 作り手情報
FUJITA KINZOKU
2020年11月2日