二段重箱「○△□」

二段重箱「○△□」

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一度、出光美術館で見た記憶がある。
それは、仙崖の書「○△⬜︎」である。
その意味は、一説によれば、禅の真髄を意味し大宇宙だと言われている。

製作当初は、このような模様を彫ろうとは想像もしていなかったので不思議である。

出来上がった無地の二段重箱を見て、蓋の栃の縮杢に比べると一段目、二段目の木目がおとなしかったので模様を彫ろうと思ったのが始まりだった。
そこで、どんな模様を彫ろうか思案するなかで、お正月やおめでたい席で使用されることを想定して、吉祥文様に候補をしぼっていた。

正方形を格子状にシンプルに並べた市松模様が、上下左右に途切れることなく終わりのないイメージなため、「永遠」や「発展」、「繁栄」の意味を持つ、縁起の良い柄と知り、正方形の重箱に相応しいと思い、市松模様に決めた。市松模様を周りにあしらったら、これで終わるつもりだったが、最近は、蓋物の底の裏面にも文様を彫ることが多かったため、必然的にこの重箱にも手を加えたくなった。

試行錯誤した結果、一段目の底の裏に、蛇の目模様を彫った。その理由としては、単純に□に対して○という短絡的な思いつきだった。実は、この時点では、二段目にも蛇目模様を彫るつもりだった…
古来、蛇の眼には「真実を映し、悪いものを退ける力がある」と信仰されてきた。悪霊退散の意味が込められているらしい。
一段目の蛇の目模様を彫り終えた直後に、もしかして三角形も吉祥文様があるのではないか。そう思って調べてみると、鱗文様がでてきた。

三角の鱗文様は古くから魔物や病を示すものと言われ、古墳の壁画や装飾に、神に屈した悪魔の印をあえて描くことで、忌み嫌うものを追い払おうとしたともいわれている。京都には現在も、女性の厄年(33歳)に鱗文様の長襦袢を着る習慣が残っている。

こうなると、必然的に二段目の底の裏には、鱗文様ということになる。
そして、出来上がってみると「○△⬜︎」になってしまったという具合だ。

意図せずして、この重箱が出来上がってきたことが不思議でならないが、なぜだかしっくりきている自分がいる。

お正月の重箱として、お弁当箱や盛り付けの器として、またはお道具箱として様々なシーンを演出してくれるはずです。

材料:栃
仕上:拭き漆仕上げ
寸法:全体160×160×126(mm)
   一段目・二段目160×160×57(mm)
*取扱上の注意

スポンジと中性洗剤を使い、十分に乾かしてください。
食器洗い乾燥機は、ご使用をお控えください。長時間、水に浸しておくと変形する可能性があります。洗ったあとはなるべく、すぐに水分を拭き取ってください。

漆塗りの作品は、塗り直すことも可能ですので、お気軽にご相談ください。

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Miyabow

福井 作品数:724

1980年石川県生まれ。国立高岡短期大学で木材工芸を専攻。2000年卒業、家具工房に就職し3年間勤務の後、酒蔵に転職し7年間蔵人として過ごすが、脳性麻痺の男性…