いい ちいさな ものづくり

過去の想いを未来につなぐ、余白の作る“ふと”手がのびる服

ー 作り手

毎朝服を選ぶときに“ふと”手がのびてしまう服、無意識に身体と心が選ぶ服。
余白」さんはそんな服を目指して、年齢や性別の壁を感じさせない、シンプルで飽きのこない日常着を作っています。

東京都台東区・鳥越にあるギャラリーを兼ねた実店舗では、自身のブランドを中心に、布の産地で出会ったものや心地よく生活になじむ雑貨をセレクトして販売。また、服を制作する際に余った生地や素材も並んでいます。

家業である肌着製造で出会った職人との関わりやそこで培った技術を活かし、“再生”、”定番”、”産直”、それら3つの作り方を組み合わせた”感覚”、合わせて4つのシリーズを展開しています。

工場7

ー ものがたり

余白さんの服作りは、生地の”再生”からはじまりました。

日本は“もの”に恵まれた国だからこそ、残反(余った布)や残糸、そして残った服がたくさんあります。そして、使われなくなったものは破棄されるか倉庫の中に眠り続けている状態。
「余白」の“再生”シリーズでは、そんな本来捨てられるはずだった生地や糸を使用しています。

縫製工場の倉庫に眠っていた使われない生地やを糸を選別、素材からデザインを決め、工場の閑散期に製造する。

「余白」の代表である渡辺さんは、家業である肌着製造業を継ぎ、当初はアパレルの下請けを中心に事業を行なっていました。その中で大量の生地を毎回廃棄する現場に立会い、これらの残反を活用して日本製でも低コストの服が作れるのでは、とはじめたのが「余白」であり、”再生”シリーズです。

もともとは、コスト削減や捨てられていく生地や服がもったいないという気持ちから生まれたシリーズでしたが、10年以上続けてきた今、「余り物」である天然繊維は自然界で作られた限りある資源ということに改めて気がついたそう。

地球の恵みである貴重な資源を無駄にしないため、“再生”では余ったものをリユースすることで、循環する服を目指しています。

工場3

次に作りはじめたのが、“定番”シリーズです。

“再生”で培った技術を取り入れ、製造する際に生地を余すことなく使い切れて、さらに日常生活にストレスのかからない服を実現するために、伸縮性に優れたオリジナルのカットソー生地を開発。

糸の選定から縫製、染色まで3ヶ月もの時間をかけて生地を作り、移りゆく流行に左右されないシンプルなデザインへと形作っていきます。
生地を作るとき、縫製するとき、無駄が出ないように作ることで、商品自体に余計なコストがかからず、良いものを価格を抑えて作ることができるのです。

そしてその後生まれた“産直”シリーズは、“再生” “定番”の2つのシリーズを作っている中で出会った産地の伝統技術を軸にしています。
日本の布、それぞれの産地の技術から学び、そこから得た事を「余白」の感覚を通して日常着という形に落とし込んでいます。

“再生”、”定番”、”産直”。
最後に生まれた“感覚”シリーズは、それらの3つの作り方を組み合わせた、いわば余白さんの歴史そのものです。

今まで培ってきた技術、知識、そして出会い。その全てを蓄えながら成長を続ける”感覚”は、作り方にとらわれることなく、常に新たな可能性を追求しています。

工場5

ー 想い

全てのシリーズに共通して大切にしているのは、生産者の立場を考えた服作り。
生産現場に自らが足を運び、生産者の話を直接聴くことで得られる気づきや学びから、服を作る際の余計なコストや無駄を減らすことに繋げています。

生産者側にも無理な負担がかからず、売る人、使う人、作る人がそれぞれ気持ち良い影響をもたらすように。そんな想いから、シリーズを展開しています。

工場4

昔の布や糸、伝統技術を現代へ。作る人から使う人へ。

余白さんは、過去と未来が繋がり、循環する仕組みを模索しながら、自分たちの最善を尽くして、関わる全ての人々が豊かになる服を作り続けています。

ー 作り手情報

余白(ヨハク)

2020年6月9日


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