和紙人形『homo homini lupus est. ー わたしたちはやさしくない』

homo homini lupus est.
——人は人にとって、狼である。(古代ローマの警句)

この作品は、ニュース映像の中で「にこやかに握手をする大国のリーダーたち」を見て、ふとよぎった違和感から生まれました。
ほんとうに仲良しなの？
それとも、笑顔の裏では自国の利益のことしか考えていない？
大人の世界では、笑顔で握手をしていても、心の中では計算や駆け引きが渦巻いていることがあります。
そんな猜疑心や不快感を、無表情のふたりの子どもに重ねて形にしました。

見た目はちょっとレトロでお菓子みたい。
サーカスやメリーゴーラウンドのような、甘くてかわいらしい世界を思わせるビジュアルにしています。
でもその“甘さ”は、仮面のようなもの。
大人の世界では当たり前の計算や駆け引き、
もしも子ども同じことをしていたら…
きっとその光景は、ひどく気味が悪いはずです。

ふたりをつなぐリボンは、切りたくても切れない関係のしるし。
足元のキラキラしたガラスは、おたがいに取り合う利益や欲望の暗示。
それが宝石のように見えても、そこには笑顔もなければ目線が交わることもありません。

人物は、指先からまつ毛に至るまで全て和紙でできています。
頭のリボンは、青いインクで染色し、クシュクシュ感が消えないよう加工してあります。
土台は紙粘土を使っており、古いコンクリートのようなヒビが入るように設計しました。着色はアクリル絵の具です。

ふたりの少女は、一見仲良しのように見えて、どこにも“心”がありません。
まるでサーカスの演目のように、見る人にちょっとしたぞわっとする気持ちを残します。

表面の可愛らしさと、その奥に潜む不穏のコントラストに触れてみてください。


【大きさ】高さ 約15cm　横幅 9cm　奥行6cm
　　　　　箱　11.3cm×8.3cm　高さ 17cm

【素　材】和紙・絵の具・レジン・リボン・紙粘土・ダイヤモンドカットガラス