1. HOME
  2. iichiギャラリー
  3. 地場産業・伝統工芸による新しいモノ作りプロジェクト DESIGNING OUT
400年前の有田を蘇らせた職人、文祥窯「型打ち輪花皿」。

400年前の有田を蘇らせた職人、文祥窯「型打ち輪花皿」。

唐津焼の一産地にすぎなかった有田の窯から日本で初めての磁器が生まれ、やがて有田焼が国内のみならず世界各地に広まり今にいたるという、400年もの歴史の壮大なストーリーが秘められています。
伊万里は、唐津と有田の中間に位置し、古来より互いの産地の影響を大きく受けてきた、いわば陶磁器文化が交わる場所。そこで土に向き合う「文祥窯」の馬場光二郎氏は、当地ならではの、しかし他の誰も成し得ない独自の器をつくり続けています。

草創期の陶工たちと同じ闘いを挑み泉山の石を我がものに。

草創期の陶工たちと同じ闘いを挑み泉山の石を我がものに。

有田焼は朝鮮陶工の李参平が有田泉山で磁石を発見したことに端を発しますが、実は現在有田焼の原料の主流となっているのは熊本県天草の天草陶石。成型の容易さなどから、地元にあるにも関わらず、泉山は有田・伊万里の職人にとって歴史の遺産として忘れられた存在でしたが、馬場氏はその泉山の陶石と向き合います。九州陶磁文化館で出合った約350年前の古伊万里に心打たれ、その古拙の美を現代に蘇らせたいと考えるようになりました。
粘り気が少ない泉山陶石は乾燥の途中で裂けたり、焼成で割れたりと困難が多い上に他に同じような取り組みをしているつくり手もなく、手探りで解決の術を探って、数年をかけて古伊万里のような温かみのあるうつわを蘇らせることができたのです。

「器は料理の着物」。魯山人の格言を形に。

「器は料理の着物」。魯山人の格言を形に。

完成した器は単純な“白磁”とは一線を画すモダンで色気のある佇まい。素地には古伊万里と同じく気品のある青みがかかり、また鉄分が多い泉山ならではの鉄粉が景色を描きます。菊形の文様やうっすらと浮かぶ唐草で陰影がつくこともあり、シンプルながらも見る者を飽きさせません。また、一歩引いた意匠のため料理の邪魔をしないのも佳処。「北大路魯山人の言葉に“器は料理の着物である”という至言があります。盛りつけたとき、その料理に合い、美しさを引き立たせる器。つくり手として、その感覚は大切にしていきたいと思います」(馬場氏)。

禅の境地にも似たシンプルな美の極致。瑞峯窯「瑠璃釉大鉢」。

禅の境地にも似たシンプルな美の極致。瑞峯窯「瑠璃釉大鉢」。

大正6年創業の瑞峯窯は、窯業の盛んな有田応法地区でもひときわ重厚な佇まいを見せる窯元。昔からシンプルなデザインで料理を引き立てる割烹食器を得意としてきました。多種多様な要望に柔軟に応えてきた経験から、釉薬と多彩な技法のストックは膨大。
今回の『DESIGNING OUT』では古陶磁を再現する作り手として『瑞峯窯』原田耕三郎氏に白羽の矢が立ちました。

現代の食のシーンになじんでこそ真に美しいかたちと名乗れる。

現代の食のシーンになじんでこそ真に美しいかたちと名乗れる。

もともと、焼物を始めた頃から古伊万里の雰囲気に魅せられていたという原田氏。九州陶磁文化館の柴田夫妻コレクションに並ぶ古陶磁の再現は、職人としてまたとない挑戦の場でした。当初原田氏は美術館で実際に手にとった現物をもとに、忠実にそのサイズ感を模しますが、オリジナルは洋の概念がない江戸中期の器だったため、それを、現代の食のシーンになじませるため、ナイフとフォークを使っても食べやすいように、高さを約3.5cm下げ6.5cmにリデザインしました。

数百年前の仕事に思いを馳せ、心打つ瑠璃色を目指す。

数百年前の仕事に思いを馳せ、心打つ瑠璃色を目指す。

最も注力したのが瑠璃色と白磁の表現。青と白というシンプルな配色がゆえに、その色合いや描き分けが成否の鍵となったのです。そのために、特別に深みのある瑠璃釉をあつらえました。最終的に青になる部分に釉薬をはじくゴム液をかけ、真ん中だけに白い釉薬を施釉し焼成します。次にその中央の白い部分にゴム液を塗り、外側に呉須と瑠璃釉を施すというなんとも手のかかる手法を行いました。更に青と白の際の部分には筆で青を塗り足すことで、コントラストを強めるなど細部までこだわりが。「昔の職人は蠟をかけ分けたり、刷毛で塗って何度も素焼きをしたりと手をかけて1枚のうつわを焼いていたんだなと。でも今回は商売を度外視して心血を注ぎましたが、写しの面白みも感じられ充実感がありました」と、原田氏も納得の出来映えとなりました。

野趣と洗練が調和する器、由起子窯「窯変黒唐津深鉢」。

野趣と洗練が調和する器、由起子窯「窯変黒唐津深鉢」。

一般の家庭用としてはもちろんのこと、料理人のファンも多い土屋由起子氏の器。土屋氏は唐津で生まれ育ち骨董好きだった父のもと唐津焼に近い環境で育ちました。短大の工芸科を卒業後、23歳でいきなり独立して窯を開きますが、やがて不思議な縁から窯を構えつつも憧れていた『隆太窯』の中里 隆氏に師事するチャンスが巡ってきます。美食家としても知られる中里氏。弟子入りすぐは魚のおろし方など料理の基礎から教え込まれました。また、土屋氏自身1児の母であり毎日台所に立つ生活人。土屋氏の器はどれもがシンプルで控えめながらも料理を引き立て、実に美味しそうに見せるのです。「ついつい使いたくなる、出番の多い器を目指しています」と土屋氏。素直に食卓になじみ、料理を映えさせるうつわは、食を大切にする多くの人たちに愛されています。

黒唐津が持つ百花繚乱の色や質感を表現したい。

黒唐津が持つ百花繚乱の色や質感を表現したい。

ぽってりとした釉薬の白磁器や「焼き締め」のような風合いの窯変黒唐津など、様々な意匠の器を焼く土屋氏。黒唐津は土屋氏が20代の頃、古唐津窯址を探索していた際に出合った黒唐津の陶片に心奪われ、その姿を追ってきたという土屋氏にとって思い入れの強いうつわ。釉薬の調合や土、そして焼成方法を数えきれないほど繰り返す中で、黒の中に艶やかな光沢感やしっとりと深い漆黒など様々な表情をつくり出すことができるようになりました。片面に金属のような光沢感があるのが特徴。金属の印象を広げ、全体が黒や金銀を含む多彩な色合いになるようにしました。

釉薬の調合を極め、”窯の魔法”に託す。

釉薬の調合を極め、”窯の魔法”に託す。

唐津の光沢感は、⻤板と呼ばれる鉱物や天然土灰の他、ガラス分や鉄分になる原料などを巧みにコントロールしないと表れません。中でも黒唐津の釉薬の濃度は重要で、濃度が濃いほど黒く、薄くなるほどに黒さは薄れ柿色に近くなります。しかしイメージする色は黒と褐色、柿色が複雑に混じり合い金属のような光を放つ絶妙な色合い。そこで徐々に黒釉の濃度を下げていき、最初のサンプルの半分以下まで希釈。そして焼成時間を通常よりも長くとり、冷却もゆっくりさせることでイメージどおりの色が表現でき、黒を主体としながらも、柿色や飴色、褐色そして金属のような光沢感と幅広い色彩が浮かぶ深鉢が完成しました。

時代と大陸を越え歴史的名作が蘇る、畑萬陶苑「反り鉢」。

時代と大陸を越え歴史的名作が蘇る、畑萬陶苑「反り鉢」。

「DESIGNING OUT」では、陶磁器の一大産地としての礎を築いた古人への敬意と挑戦をテーマに、古陶磁の“写し”にチャレンジした器がいくつかあります。その大半は九州陶磁文化館に眠る古伊万里でしたが、唯一、それから時代を更に遡ること600年。今から約1000年前の中国北宋時代の名作に挑んだ作家がいました。挑んだのは伊万里焼の気鋭作家として名を馳せる畑石修嗣氏。

重力を感じさせないような浮遊感のある造形のつくり手。

重力を感じさせないような浮遊感のある造形のつくり手。

江戸時代、鍋島藩が将軍家や朝廷への献上用として、最高級の器を焼く藩窯を構えていた伊万里市郊外の大川内山地区。その「鍋島焼」の伝統を継ぐ窯業の里にあるのが「畑萬陶苑」です。今回の『DINING OUT』に参加した5代目の畑石修嗣氏は弱冠31歳と、プロジェクト参加メンバーの中でも最も若手。しかし大学時代に彫刻を学んでいたこともあり、その独特の感性と造形の技術は窯業界でも突出しています。今回モチーフとなったのは中国北宋時代の名器ですが、なんと手がかりは写真1枚だけ。
畑石氏は今回のプロジェクトで最年少の作家ながらも、難易度の高い器の再現に挑戦しました。

完璧な黄金比を求め、想像と創造を繰り返す。

完璧な黄金比を求め、想像と創造を繰り返す。

北宋時代の器は小さく絞った高台とそこから伸びる直線的なシルエットが美しさのゆえんなのですが、それが再現する際の最大の難関となります。見込みから伸びる胴の部分が長いほど乾燥や焼成の段階で生地が下に垂れてしまい、直線的なラインが出ません。更に生地の厚さを完全に均一に仕上げないとそこから歪みが生じてしまうのです。その上、今回リクエストのあった「薄くて口が広がったフォルム」ということと「器の強度」という相反する要求を満たすため、何度も試行錯誤を繰り返されました。こうしてようやく、実現不能ともいわれた名器が現代に蘇ったのです。「手がかりが少ない中、手触りやフォルム、色など想像力と創造力をふくらませながら制作しました」(畑石氏)。気鋭作家の渾身の作となりました。

このエントリーをはてなブックマークに追加
このページのTOPへ

パスワードを忘れた方はこちら

ログインできない場合はこちら

携帯のメールアドレスにて登録される場合は、
ドメイン iichi.com より受信できるよう、
メール設定の見直しをお願いします。ドメイン指定受信について
iichiの利用規約およびプライバシーポリシーをお読みいただき、
同意される方のみ「同意して会員登録する」ボタンを押してください。