【iichi探検隊】ものづくりの現場・工房見学編 〜リン版画工房〜
ブログ【iichi探検隊】は、東京から移住してきた鎌倉新人のスタッフ二木が見つけた“ほっこり”や“わくわく”を皆さんと共有しながら、iichiオフィスのある湘南の空気をお伝えするシリーズ。さて今回は、幸運にも藤沢の版画工房を見学させてもらえることに...

こんにちは。厳しい寒さも少しずつ和らぎ、清々しい梅の香りに春の予感を感じる最近の鎌倉です。
先日、鎌倉オフィス近くのギャラリーにふらりと入ったところ、ちょうど展示をされていた「リン版画工房」さん。工房では版画教室も運営されていると伺い、「春だし新しい習いごともしてみたい!」という気持ちがムクムク。お願いしたところ工房を見せていただけることに!工房の歩み、活版印刷との出会いや想い、版画教室についてお話しを伺ってきました。
繊細な手作業の世界 版画+金属活字

神奈川県藤沢市の住宅地の一角で、城戸宏さん・優子さんご夫婦が営まれる「リン版画工房」。もともと東京造形大学で版画を学ばれた後、美術館でのお仕事なども経て工房を開設。当時は版画のみの制作工房だったそうです。
あるとき工房で冊子を作成することになったお二人。挿絵は版画なのに文字部分の出力はオフセット印刷やプリンタなどのデジタル出力になってしまうことに違和感を感じ、なにか良い文字印刷のツールはないかと模索していたときに、「金属活字(活版印刷)」に出会いました。活版印刷は古くからの印刷方法で、「活字」と呼ばれる文字を1文字ずつ組み合わせ、インクで転写する技術です。インクの量、紙への圧力などによって生まれる1枚1枚の表情の違いが魅力のひとつ。

しかし、デジタルテクノロジーの発展とともに、技術や手間を必要とする活版印刷という仕組みはすっかり過去の遺産に。
このまま伝統的な技法である活版印刷を絶やしてはいけない、という思いで金属活字や印刷機を譲り受けたそう。「ツバメ活版堂」として活版部門を立ち上げ、版画と活字の組み合わせを特徴とした作品制作に励まれています。

お話の中でも意外だったのが、活版印刷最大の特徴とも言える「印字の凹凸感」について。紙面の裏に響くほどの強い印圧は文字を読みづらくしてしまったり、金属活字の摩耗にもつながるのだとか。美しく均一に刷るには印刷機側で印圧を調整し、何度か試し刷りするのがポイントだそうです。
小さな活字を順番に並べて版を組み、刷り加減を見ながら1枚ずつ印刷していく。いかに細やかな手作業であるかということに改めて驚きました!

印刷機に実際に触らせていただき、思いの外軽いハンドルにびっくりしたり、初めて目にする道具にワクワクしたり、楽しい発見がたくさんありました。活版や印刷機のお話になると生き生きと熱心に教えてくださる姿に、お二人の中に溢れる情熱がしみじみと伝わってきたのでした。
“1990年鎌倉市に開設。1996年藤沢市に移転、当初は美術家の加納光於先生の専属工房としてスタートしました。リン版画工房では、作家・画廊・出版社などから依頼された「版画制作」、一般の方を対象とした「版画教室」、版画を身近に感じていただける美術館等での「出張講座」、版画プレス機や版画ゴムローラーなどの「販売」、作家の方との「共同出版」を行っています。”
“「ツバメ活版堂」は、リン版画工房の活版部門です。金属活字印刷と版画、古版木と金属活字の作品、作家版画作品への文字印刷、カードなどの商品も作っています。デジタルが普及した今日に、大変に手間がかかり、技術と知識も必要なアナログ金属活字組版作業をやっている酔狂なやつがまだいたんだ。物好きなやつがいるなぁと笑っていただけたら幸いです。”(リン版画工房HPより)
ゼロから学べます 版画教室
さて、気になる版画教室について伺ってみました。嬉しいことに、全くの初心者から通うことができるそう!
基本的に銅版画の教室ですが、希望者はリトグラフ・木口木版画・紙版画・ガリ版などの版画技法、金属活字を含んだ活版印刷、簡単な製本なども習うことができます。

「単に技法を学ぶのではなく、版画に関わる事で日々の生活の楽しみが増えるような教室にしたい」とのこと、カリキュラムはなく、生徒さんは自分のペースで思い思いに作品を制作しているそう。たくさんの作業を経て刷り上がった版画やカードたちは、繊細なラインと豊かな表情に満ちていて、いつまでも眺めていたくなりました。

使い込まれた印刷機、並んだインク、小さな活字。工房にはどこか時代を超えた静かな時間が流れているようでした。自らの手を動かし、感覚を研ぎ澄ますことで自分とじっくり向き合うひと時を過ごせそう。
新年度に向けて自分の名刺を刷ってみる、お子さんにオリジナルの絵本を作ってみる。そんな時間の使い方も素敵ですね。1日体験もできるので、この春何か新しいことを始めたい方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
リン版画工房
版画制作・出版・教室
〒251-0052 神奈川県藤沢市藤沢1057
2月9日〜3月4日 奈良県「とほん」にて栞展に出品予定
3月18日,3月25日 「藤沢市浮世絵館」にて銅版画のワークショップ開催(2回講座)
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