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#05 伊藤博敏(石のアーティスト)

2011.7.28

石という素材そのものを面白く感じられる作品を作ってみたい

城下町、松本。松本城のその凛とした佇まいはこの町の清々しい空気の源泉だ。
その築城時代から石工事に関わり、 創業100年以上もの間、石の魅力を探ってきた伊藤石材店。ご主人の伊藤さんは、世界でも活躍する「石のアーティスト」でもある。

海外での展覧会からお戻りになったばかりですね。

もう6~7年まえから米国などでも展覧会を行っています。最初はインターネットを見たギャラリーの人から声をかけていただいて。 コレクターの方には、年配の人から若い人までいらっしゃいます。私の場合はそんなに大きな作品じゃないので、 「あなたのこの作品を持っているよ」といって、実際に持ってきてくれる人もいたりして。 こっちが思っていた以上に喜んでくださるのがうれしいですね。
海外に行くとますます「石」って素材が魅力的に思えてきますね。「石」って地球そのものだから。本当に国籍も関係なく楽しんでもらえる。

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伊藤さんの作品は、やはりアートとして受け取られているのでしょうか。

日本では、工芸品は基本的に生活の中で使えるものですが、米国では生活様式がそもそも違いますし、個性があらわれているものが求められます。 アートであり、暮らしの中で使えるものでもある、というような。「使える立体造形」という感じでしょうか。 逆に言えば、生活の中にアートがあるとも言えるし。なんだか面白いですよ。

伊藤さんは家業の石材店の2階を、作品のギャラリーにされていますが、これも面白いですよね。こんな石材店ってなかなかないんじゃないでしょうか。

そうかもしれませんね(笑)。もともとは松本城築城の頃から石の加工に携わった石屋の末裔で、店の創業は明治12年。 もう100年以上の歴史があることになりますね。 石材店としては、日頃は墓石などをつくる仕事が多いのですが、彫刻やこの辺りにも多く残る「道祖神」もつくります。

「道祖神」は子孫繁栄や、村の守り神などさまざまな願いが込められた古い土着信仰の風習ですね。

特に安曇野からここ松本あたりには「道祖神」が古くから沢山あった土地柄なんです。 男性器や女性器をかたどったものもあるし、夫婦で手でつないでいるものもあれば、子供たちが「道祖神」に色を塗ったりするお祭りもあるくらいです。 石に何か思いを込めていく、そんな土地柄だといえばそうかもしれませんね。
祖父の彫った千手観音、不動明王なども庭に残っていますが、そんな姿を見ながら育ったので、 自然に仕事以外にも何か石をつかった作品をつくるようになったのかもしれません。

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伊藤さんの作品は、石なのに柔らかそうだったり、布のようだったり、水のようだったり、生き物のようだったりして、なんだか日頃の生活感覚がひっくり返ってしまうようなドキドキ感があります。

石という素材に惹かれ続けてきたし、石という素材そのものを面白く感じられる作品を作ってみたいと思っています。 私は祖父のように思いを石に彫って表現するという素朴な作風とは全く違いますし、リアルを追求しようともあまり思っていません。

どんな時に作品のアイデアが浮かぶんですか?

やっぱり毎日毎日、石を眺め続けていますから、いろんなことを思うものですよ。いつも眺めているこの石が笑い出したら面白いよな、とかね。荒石を切っているときに、断面が毛糸のように見えて。じゃあセーターを実際につくってみようか、って。 日本の工芸の魅力は「遊び」があることだと思うんです。暮らしの中の器も、お月さんを形にしてみたり。漆の蓋物で、ススキ野原の静かな佇まいの蒔絵が施され、蓋をあけるとそのススキ野原から鳥が飛び立とうとする光景が描かれていたり。そういう「遊び」や物語性が日本の工芸にはたくさん見られる。そのことがすごく魅力的だと思います。

伊藤さんの作品は、石を石ではない素材のように表現されているんですが、そのことが逆に、「石」への興味をかき立ててくれます。面白いなあ。

それはとてもうれしいですね。石はとてもリアルな存在です。絵で描いて「これは石ですよ」と表現する必要もない。目の前にリアルな石がある。 それだけで何か強い存在感を人に感じさせてしまう。だから、石ころに少しだけ手を加えることで、観ている側はいろいろと想像できる気がします。
ギャラリーのテーブルの上に、ただの石ころだけが並べられている。何の変哲もない石ころ。その石ころを触りながら微笑んでいる人がいたり、 耳をすませてその石ころの声を聞いている人がいたり、触れると光りだす石ころがあったり。 でも遠くから眺めると相変わらずただの石ころが転がっているようにしか見えない。そんな展覧会をいつかやってみたいなあって思っています。

伊藤博敏

Hirotoshi Ito

1958  長野県松本市に生まれる
1982  東京藝術大學美術学部工藝科卒業
1987  アトリエヌーボーコンペ審査員賞
1990  東京デイリーアートコンペ入選
1992  アビターレイルテンポ (Italy)
1995  第2回トリックアートコンペ優秀賞( (第3回〔1997〕第4回〔1999〕第5回〔2001〕入選)
2006  個展「石笑う」 朝日美術館
個展"Pleasures of Paradox" ボストン(USA)SOFA Chicago (USA)(also in ’07.’08)
2007  SOFA New York (USA)(also in ’08.’09)
2008  MIASA EXHIBIT (USA)(also in ’10)
2009  個展Marble and Stone Sculpture (Australia)
2011  個展"Pleasures of Paradox ‘11" ボストン(USA)
※他、個展を中心に各地で作品発表

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